
病の見方

「病」をどのように診るのか?
日々臨床していますと、多くの患者さんが、医学というのは同じ生理観や病理観に基づいて診断を行い、治療を行うものであると思われているように感じます。
例えば、
「お酒を飲みすぎたので二日酔いに効くツボはありませんか?」
「肩こりや腰痛に効くツボ派どこですか?」
「ダイエットに効果的なツボはありますか?」
このような質問をされることが多く、これらの質問の内容を吟味すると医療の違いを理解してもらえていないことに気づきます。
質問の意図を考えると「Aという症状に効果的なBという処方はありますか」ということになるかと思いますが、このような固定的な医療の考え方は西洋医学のものと言えます。
鍼灸治療の一部にも、西洋医学のこのような考え方を導入したものが確かにあります。
例えば、「特効穴」ということで、ある種の症状に効くとされるツボを使用して治療する方法です。
腰痛には○○穴、五十肩には◎◎穴、生理痛には◇◇穴というように、数種類のツボが特効穴として挙げられているので、鍼灸に興味をもたれる方の関心はこちらに向くのかもしれません。
世間一般では、このような治療法のみが知られるようになり、鍼灸治療とは特効穴を使用して治療する方法であるという間違った医療の解釈が広がっています。
特効穴を使う治療は、百発百中の確率で効果が出るほど簡単ではなく、また、手っ取り早く病を改善するような便利なものではありません。
「Aという症状にはBというツボ」という特効穴な鍼灸治療は、施術者にとっても、患者さんにとっても単純でわかりやすいのですが、それは西洋医学の診断と治療の考え方と同じ治療法と言っても過言ではないと思います。
このような西洋医学の考え方を取り入れる鍼灸師が多い現状があることや、東洋医学を用いて治療を行う鍼灸師がまだまだ少ないことも誤解を招く原因なのかもしれません。
そもそも東洋医学の本来の姿は、「特効穴」に頼るような診断や治療ではなく、病の根本的な解決を目指して診断と治療を行うところにあることを皆さんに知ってもらう必要があります。
鍼灸治療にまで影響を与えている西洋医学ですが、現代の医療において、西洋医学の考え方はあまりにも馴染みが深く、その医療的な処置に対して疑問を抱く方は決して多くはありません。
西洋医学の医療を受診すると、二日酔い、肩こり、腰痛などの症状に対して、確実にそれぞれに対応する薬が製薬メーカーのガイドラインに沿ってあります。
胃酸を抑制する、筋肉を弛緩させる、炎症を抑えるということが薬の目的であり、むかつきや痛みなどの不快な症状を取り除くことを意図しています。
このように病気によって現れた不快な症状を一時的に緩和する治療法を「対症療法」と呼んでおり、西洋医学では一般的に広く用いられている治療方法なのです。