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小島 秀輝

四百四病 参 病とつき合う


ICDコードには大分類として22章、A〜Zまでのアルファベットと二桁の数字を合わせた3桁表示のコードで表示されています。

あらためて分類の中身を見てみると、あまりの病名の多さに驚きます。

日々新たに病気の種類が増加しているため、定期的にICDコードを改定しなければなりません。

このことは、事故による障害、精神病や公害など新たな病気が増えていることを現していて、病気を乱造する現代文明の問題が浮き彫りになっているとも考えられます。


病の分類の増加傾向を見ても、薬さえあれば病を根絶できるという思想は、もはや幻想となっていることがわかっていただけると思います。

昨今、東洋医学が見直されている理由は、「人は本来健康である」ことや「闘病」という考え方への疑問や修正の現れではないでしょうか。


インド・チベット・中国の伝統医学に共通して見られる思想は、「自然治癒力を増強させる」ということです。

発掘された古代人の骨を調べれば、驚異的な自然治癒力の痕跡を見つけることがあります。

また、周辺にいる動物たちの自然治癒力をしばしば目にしたことがあるのではないしょうか。

これら伝統医学の基礎となっている思想は、紀元前6世紀頃に誕生した仏教の影響が大いにあります。

その仏教の経典の中に、「四百四病」の言葉があります。

古来インドでは、この世のすべては4つの元素から成り立つと考えていました。

それが仏教にも影響し、「身体も地・水・火・風の四元素からできている」となります。

人の身体には、大道具と小道具が101あるそうです。

四元素が調和していると病気は生じないのですが、調和が乱れると、それぞれに101の病が生じるとされています。

合わせると404の病になることから呼ばれるようになったという説があります。

仏教的思想では、「人はあらゆる病気を生まれつき持っている」ことになります。

西洋思想の「人間は本来健康である」のとは、正反対の考え方であることが一目瞭然です。

アジアの伝統医学は、人間は四百四病を抱えて生まれてくる「病のキャリア」として考えており、薬などで「闘病」するのではなく、自分が本来抱えている病気を出さないように養生に心がけることを重視しています。

それでも体調を崩して病になった場合のため、「自然治癒力」を高めるように誘導する治療法を確立していきました。

中国で育まれた東洋医学は、易学から「気」という思想を取り入れ、邪気を追い払い、正気を高めるという治療方法を見出します。

中国医学の黎明期、簡単な生薬を用いることや灸法を用いていたのですが、鍼法を用いるようになった頃、中国医学は飛躍的に進歩を遂げ、「黄帝内経素問霊枢」という最古の医学書を完成させました。

時代とともに生薬の使用方法も複雑となり、新たな生薬の発見、生薬の量や組み合わせをかえることで、あらゆる病気に対応できる医療体系を作り上げていきました。

誕生から2000年以上の歴史がある東洋医学には、「病を根絶する」という考え方よりも、「病といかに共生するか」という考え方が伝承されています。


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