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お母さんは「まぶい」 後編

小島 秀輝

そんな治療の最中、Yさんからうれしい報告がありました。

息子が陸上部に所属しているそうで、先日、大会があったそうです。

その大会での活躍を観たいので、会場へ行っても良いかどうかをYさんは息子さんに聞きました。

今回の大会以前、その度に会場へ行っていいかどうかを聞いてきたそうですが、「お母さんが目立つので、来てほしくない」と断られていました。

ところが、今回は来ても良いと許可がでたそうです。

そして一言、「目立たないように気をつけてほしい」とくぎを刺されました。

Yさんは息子の言い付けを守って、目立たないように注意しながら息子さんの活躍を見たそうです。

陸上の大会を終え、帰宅した息子さんに、Yさんは「目立っていなかったかどうか」を聞きました。

すると、息子さんは首を横に振ります。

「お母さんが一番輝いていたよ。」と。

予想していなかった一言に、Yさんはびっくりしたそうです。


私も大喜びして、おもわず拍手をしていました。

思春期に差し掛かった息子さんですが、お母さんがとても大好きなんですね。

お母さんが元気になって、顔色がすっかり良くなったことで、自慢のお母さんになってくれたことを喜んでくれていたことがわかりました。


私も自分の中学生ころを思い出して、水泳の大会に母が来ていた姿を思い出しました。

私は自分の活躍を見てほしいという気持ちでしたが、Yさんの息子さんがお母さんを思う気持ちは、今のYさんを見ていると十分理解できました。

私がYさんに施術した治療は、東洋医学の基本的なものです。

治療院では、顔色が悪いからとか、目の下にクマがあるという理由で、顔にたくさんの鍼をするようなことはありません。

体質や体調を考慮して、身体が本来持っている生命力を上げることを目的とします。

東洋医学では、「気血水」、「陰陽五行」、「五臓六腑」などの思想を使って、あらゆる角度から身体の状態を診察します。

それらから導き出した身体のバランスの乱れを調整することで、身体に備わった治癒機能が正常に働くようになっていきます。

いわゆる「自然治癒力」を活用して、身体に出ている不調を治していきます。


Yさんのケースように顔に現れたさまざまな症状であっても、肩こりや腰痛のような急性のもの、リウマチのような慢性疾患であっても、東洋医学の治療方針は同じです。


疲労の蓄積から始まったYさんの不調も、治療を重ねることで、ずいぶんと良くなっています。

今では顔色も足裏の冷えもすっかり改善し、頬はピンク色になって、足裏全体がポカポカの状態へと回復できました。

あとは、腰部の深部にある違和感が少し残るので、それを取りきることが目標です。


最後に、「まぶい」は現在、死語になっているのをわかって、あえて使いました。

少し調べてみると、江戸時代から使われていた言葉で、「容姿が美しいこと、可愛いこと」を意味しています。

歴史が古いことから、死語にするのはもったいない気がしました。

さらに、沖縄では「魂」の意味があり、現在でも「まぶいセラピー」が盛んであります。

お母さんがまぶくなったことで、家族の皆さんが元気になれる気がします。


Yさんの現状を一言で現すならば、「まぶい」が最適だと思います。

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