コロナウイルス4
「風邪は万病のもと」と言われます。
こじらせることなく、養生すれば自然に治ることも珍しくないのですが、それを怠ると様々な症状で苦しみことになり、また回復が遅れて長きに渡って症状が続くこともあります。
東洋医学の訓では、「風邪を治せて一人前」と言われることがあります。
風邪の症状は一つの病原体の侵入によって始まるのですが、悪寒、発熱、頭痛、咳、咽頭痛、関節痛、下痢、便秘、食欲不振、耳鳴り、めまいなど多種多様です。
東洋医学はひとつひとつの症状に対して対症療法を行うのではなく、病気の進行レベルを6段階にわけて、それに即した治療を行います。
薬の種類も豊富で、あらゆる症状に対応できるシステムがあります。
簡単に説明しますと、風邪のタイプには、風・寒・湿・火(熱)・暑・燥の6種類の組み合わせ(六淫)があります。
例えば、風寒、湿熱などの組み合せで、これら病原体を外邪として分類し、それぞれの特徴に合わせて治療法を導きます。
それに加えて大切なことがもうひとつあります。
それは、病原体に感染する人の体質と体調です。
同じ病原体に感染しても、体質や体調の違いによって発症する症状が異なるため、治療法も全く異なることになります。
この点は、西洋医学と大きく異なるところで、東洋医学だからこその強みと言えます。
私たち「人」には、病気と闘う力が備わっていて、これをホメオスタシスと呼びます。
恒常性とも言われるもので、生命力や体力によってその力は千差万別です。
東洋医学ではこの力のことを「正気」と呼んでいます。
私たちの身体が正気のみで満たされているのであれば、理論上、邪気は存在せず、完全な健康状態であるということです。
何らかの症状が出ている状態は病気であり、邪気が体内に侵入して、正気が不足していることをあらわします。
東洋医学では、正気と邪気のバランスを調えることが治療理念で、邪気を追い出し、正気を盛り上げることを目的として施術を行います。
風邪症状の場合、正気が弱った隙をついて邪気が体内に侵入します。
正気を弱らせた原因を考える必要があります。
ストレスや疲労、食べ過ぎや睡眠不足など、どれが関与したのかを調べる必要があります。
さらに、発症している症状から侵入した外邪の種類を見分けます。
体表観察を用いて、診断の間違いが起こらないように細心の注意をはらいます。
脈診を用いることで鍼灸の効果を確かめながら、治療を完結します。
これらのプロセスは、いかなる病気においても同じであり、そのお手本となるのが風邪の治療ということです。
昔の中国では戦乱が絶えず続いており、疫病の流行も想像を超えるほどでした。
パンデミックとも言える感染拡大を防ぎ、人々の命を守ろうとした先達の叡智が豊富に凝縮している書物があります。
それゆえに、これらの叡智は少しも色あせることなく、活き活きと実践可能な治療法として使うことができます。
新型のコロナウイルスであっても「外邪のひとつ」に過ぎず、正しく診断と治療をおこなうことで、重篤化を防ぐことや初期段階での
回復を速やかに導くことが可能ではないかと考えます。