治と癒
和鍼治療院の治療の目的は、「治」と「癒」の相乗効果を引き出すことにあります。
治療手段は、東洋医学に基もとづく鍼灸治療です。
東洋医学には、治癒を高める不思議な叡智が豊富で、あらゆる病に効果があります。
それゆえ、ひとりでも多くの病で苦しむ人に、その恩恵が行き渡るお手伝いができればと精進しています。
そこで、治療の目的となる「治と癒の相乗効果」のことについて、少し掘り下げてみたいと思います。
最近では、病気や傷に対して、「治る」「治す」という言葉を使うことが普通になっていますが、かつては「癒える」「癒す」の言葉を使うことが多かったようです。
そのことは、短歌や俳句において「癒える」がもっぱら使われていたことからもわかります。
「渇きが癒える」や「心の傷を癒す」と表現しても、「渇きが治る」や「心の傷を治す」とは表現しません。
このことから、二つの言葉には少しニュアンスの違いがあることがわかります。
「治」と「癒」をそれぞれに詳しく見てみますと、「治」には、他力的・受動的な意味合いがあり、「癒」には、自力的・能動的な意味合いがあるように思います。
そして、「治」には、戻す、正す、修復、除去という意味があり、「癒」には、和らげる、鎮める、満たされる、充足、和解という意味があるところにも違いがあります。
英語に変換すると、「治」はCURE、「癒」はHEALとなります。
healは、healt(健康)やwhole(全体)と同じ語源の言葉であり、それゆえ、healには全体的・全人的という意味も含んでいることになります。
現代医学は、部分的な病気のことにのみを診断し、固定的に病を治療します。
これは「治」の範疇と言えます。
ところが、私たちは肉体だけでなく、心や霊性を兼ね備えた存在であり、社会や自然、宇宙との調和を必要とする全人的・全体的な生命活動を営んでいます。
このことから近年、ホリスティック(全的)な医学を求める人が増えてきました。
holisticもhealの全人的・全体的という点において同じです。
このように語源をみてくると、healの方がcureよりもより広大な意味をもっていることがわかります。
現代医学では、病気は病名で縛られ、固定的なものとなり、闘病という概念のもと、自分自身の肉体にダメージを与えかねないほどの「治」を施します。
一方で、古代医学や東洋医学では、病とは流動的なものという「液体説」にそった考え方があり、自分自身と病との和解、心身の充足感を重視する「癒」を用います。
「治」には「苦」を伴うことが多いように思うのですが、「癒」には「快」が伴います。
和鍼治療院にて治療を受けた人は、身体が軽くなり、気分爽快で帰宅されます。
その中にはリウマチや脊柱管狭窄症のような慢性疾患でお悩みの人が多く、当然のことですが、一回の治療で治ることはありません。
しかしながら、一回の治療効果でも症状の軽減、身体機能の向上を実感されます。
このことは、和鍼治療院の治療が「治」の効果だけでなく、「癒」の効果にも役立っていることを良くあらわしていると思います。
「病気とは自然に癒えるもの」という考え方を大切にしているのが、和鍼治療院の治療方針です。