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和鍼治療院 小島秀輝

「MAGIC」の称号


JTB総合研究所の報告書によると、2016年以降、毎月200万人を上回る外国人が日本を訪れているそうです。

そしてこの度、和鍼治療院にも訪日客のカップルが来院されることになりました。

道路に看板を出してはいるのですが、ビルの2階に治療院があることから、看板を見てから来院される人は、年間を通して一人いるかいないかです。

日本人でもそんな状況なのに、外国の観光客らしき人が入ってこられたので、軽くパニックになりそうになりました。

入口付近で事情をお聴きすると、「男性が右足首を痛めているらしく、滞在中の観光旅行に支障がでるのでなんとかして欲しい」というご要望でした。

「マレーシアからの訪日で、二日前に来て、あと五日ほど滞在すること」や、「明日からはホテルを京都に移し、京都と奈良を観光してから、もう一度大阪に帰ってきて、最終日にUSJへ行く予定にしていること」などを聞くことができました。

治療院にはベッドが3台あるのですが、すべて治療中で使用していたことから、10分ほど待合室で待ってもらうことに。

待ってもらう間、椅子に腰かけている二人の姿を見ていますと、指のリングを気にされていたので、日本で言うところの「新婚旅行」で来日されたことがすぐに想像できました。

治療中でしたが、空き時間に少し問診を行なったところ、足首を痛めたのはマレーシアにいた時で、渡航する三日ほど前にバスケットをして捻挫したことが判明しました。

腰掛けている男性の脈を診させてもらうと、「胃の腑」に問題があることが判明。

ご本人に、「日本へ来てから食べ過ぎていないか」と聞いてみると、お二人が笑って頷いておられました。

これにより、「マレーシアで捻挫したときはそれほど痛みがなく、普通に歩けていたのに、日本に来てから悪化して痛みがひどくなった理由」が、「食べすて胃に負担をかけたことにある」と想定しました。

しばらくして、先の方の治療が終了し、ベッドへとお二人をご案内し、奥様には椅子に座ってもらい、治療の一部始終を見てもらうことにしました。

ご主人に鍼灸治療の経験の有無を聞いたところ、「鍼灸治療は知ってはいるものの、受けたことはない」とのことでした。

鍼灸治療の経験もないのに、どうして和鍼治療院を選んだのかを知りたくなり、お二人に質問すると、同時に「ホテル」という答えが返ってきました。

私の英語能力ではそれ以上を聞き出すこともできず、詳細は分かりませんが、どなたかが治療院を紹介してくださったことは理解できました。

治療室のベッドに仰向けに寝てもらい、両足首の状態を比べてみました。

手で触れると、激しい痛みのある右足が腫れて熱感があり、左足との違いがはっきりとわかります。

昨晩は氷でアイシングを一度したそうですが、少し不十分なので、今後、歩いたあとは必ず10分程度のアイシングを三回ほど行うようにとアドバイスしました。

足首の可動域を確認し、もう一度、脈診で胃の状態を確認したのち、左足の三里に鍼を施術。

足三里と胃が経絡として関連があることを説明し、胃が悪くなるとなぜ足首に影響がでるのかをなんとか伝えることに成功しました。

足三里の置鍼が終了し、足首を動かしてもらうと少しだけ痛みが軽減していました。

彼は、「a little better」とコメント。

引き続き、三里以外の胃の調整に使うツボに二箇所ほど置鍼し、ようやく胃の調整が終了。

今度はベッドから立ってもらい、足の状態を確認してもらいました。

体重をゆっくりと右足にかけて、かなり痛みが軽減したのを確認できた様子。

足首を動かしてみても、先程よりも痛みがさらに軽減していたので、「much better」とコメントをもらいました。

ここまで、痛めている右足には一本も鍼をしておりません。

ですから、途中、痛めているのは右足であると催促されましたが、「I see」とコメントして、治療を続けました。

最後に、右足の足首周囲の緊張を緩める目的と筋肉の疲労回復を目的として、右の足に二箇所だけ鍼をして終了。

もう一度、ベッドから立ち上がって、歩いてもらいました。

歩行状態がさらに改善したのか、「much better」、そして「MAJIC」とコメントをもらいました。

鍼治療後に、キネシオテープとホワイトテープで足首を固定し、持っておられたサポーターで足首を固定して、すべての治療を終了。

明日から京都へ移動するそうなので、旅の安全と捻挫の回復を願うばかりです。

海外から日本へ来て、急に足首の痛みが悪化して、とても驚かれたと思いますが、一回の治療で歩けるまでに改善できたことは、「とても良かった」と安堵しております。

この度の鍼灸治療が、日本での旅の思い出の一つとなれば、私も幸いです。

私は、「MAJIC」の称号をしっかりと胸に刻むことができ、最高の経験ができました。

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