慢性疾患と冷え性
この数年で「体温が低いと病気になりやすい」と言われるようになりました。
書店で健康関連の棚を見てみると、「体温を上げる」ことに関する書籍がたくさん並んでいるので、その関心度の高さがよくわかります。
これらの書籍に関心が集まる理由には、「慢性疾患」で悩んでおられる人の増加があると思われます。
なぜなら、慢性疾患の病気の多くは、西洋医学において特定の原因が究明されておらず、それゆえに対処療法で症状の緩和を図ることしか治療手段がない状況があるからです。
長年に渡って真面目に薬を服用していても症状の改善がなく、対処療法に疑問を持つようになった患者さんたちが救いを求めているのです。
そのことは、消炎鎮痛剤や抗アレルギー剤などの使用頻度をみれば、治療の限界を容易に理解することができます。
西洋医学に従事している医師の中にも、このような対処療法に疑問を抱く人がいます。
安保徹先生や石原結實先生は、現在の西洋医学の治療手段に疑問を抱いた医師であり、「冷え性」についての本を多数書いることでも有名です。
お二人は医学部を出てからの臨床において、薬を大量に投与することや、早期発見・早期治療をしているにもかかわらず、疾病が減るどころか増加する現状を目の当たりしてきました。
そしてある時、「病気を治すはずの薬なのに、逆に薬で衰弱して亡くなること」に気づいたそうです。
お二人は、普通の感性があれば医療に対して疑問を持つはずだと考えています。
それならば、多くの医師がそのことに気づかない理由はどこにあるのでしょうか。
新人の医師たちは、卒業してから数年は薬の名前や効果を覚えることが必要で、詰め込み式で行うことになります。
薬の効果と副作用を考えながらの投薬は非常に複雑ですから、そのことに精神を集中するうちに、柔軟な思考力と感性が消失してしまうとのことのようです。
熱心な医師ほどその傾向があるとのことでした。
確かに、西洋医学の薬は効き目が強く、即効性に優れているのが特徴で、新薬の開発によってその効能はますます強度を上げています。
その反面、副作用も強度化する「諸刃の剣」となるのが「化学薬品」です。
病で悩んでおられる人の多くは、痛みや痺れなどの炎症反応で苦しんでおられるので、薬の服用や投与でそれらが少しでも改善すれば、病が治癒したと勘違いする人が多数です。
苦痛を取り除くことを目的として患者さんが来るので、その期待に応えようとするあまり、本質を見失うことになるのかもしれません。
しかし忘れてはいけないことがあります。
それは、消炎鎮痛剤をはじめとするほとんどの薬は、人体の体温を下げていくことです。
化学薬品の副作用には、「薬疹」と呼ばれる蕁麻疹や湿疹が出たり、嘔吐や下痢をしたりすることが明記されています。
これらは、薬で身体が冷えたため、余分な水分を対外へ排出し、身体を温めようとする「防御反応」なのです。
頭痛薬として「ロキソニン系」の化学薬品を多用している人には、薬疹が出ていることが多いように思います。
体を冷やすと血管が収縮することで一時的に血流が悪くなり、痛みが軽減します。
しかし、細胞の修復には大量の血液が必要となります。
身体は再び血流を回復しようとするため、次の痛みが生じます。
さらにその痛みをなくそうと薬を使用すれば、再び同じことの繰り返しとなります。
まさに対処療法の悪循環がその図式に現れています。
そして急性の病として発症した症状が、徐々に冷えを伴うことで悪化していき、慢性化することで治りにくくなります。
しかもこの続きがあって、体質が冷え性へと変化をおこしたことで、他の症状へと病気が変化してしまうこともありえるのです。
次のコラムでは、実際に病気が変成し、多種多様な症状で苦しむことになったTさんの治療例をご紹介します。