陰陽論
東洋哲学には「陰陽論」があります。
東洋医学は「陰陽論」を用いることで、体質や病を診断するため、東洋医学を理解する上で、とても重要な考え方の一つです。 陰陽の概念は、ものの存在とその性質や変化を理解するために必須の事柄であります。 「陰陽論」は「易経」に源があり、三つの大切な真理や原則を包括しています。
その一つは、「変易」という考え方です。 これは「世の中のすべてのものは変化する」ということを意味します。 古代ギリシアの哲学者、ヘラクレイトスも「万物は変化する」と言っています。 インドのお釈迦さまは、「諸行無常」として、「一切は同じではなく、変化する」と教えを説かれました。
古今東西を問わず、「万物は流転する」ということを人類は発見し、世の中の仕組みとして認識しました。
二つ目は、「不易」という考え方です。 「変化する中に変化せざる原理がある」ということで、「変わらざる真理」を意味します。 これは西洋の哲学にはない独特の考え方です。
万物は流転していて留まることはないのですが、その変化にも法則性やパターンがあります。
春夏秋冬の移り変わりの順番は不変であり、その中に法則性があることがわかります。
三つ目は、「簡易」で、簡単明瞭な陰と陽から成り立つものを意味します。
例えば、「陽」として「男、日、火、動、上、左」があり、「陰」として「女、月、水、静、下、右」があります。
これらは比べるものの対比で決まります。
男女であれば、男は陽、女は陰。
それでは「犬と猫」の場合はどうなるでしょう。
どちらが陽で、どちらが陰だと思いますか?
有名な童謡、「雪やこんこ、あられやこんこ」の歌詞を見れば、犬と猫の陰陽関係が良く分かります。
「犬は喜び庭かけ回り、猫はこたつで丸くなる」
冬空の寒い中(陰)、喜んで走りまわることを好む犬は、「陽」ということです。
一方、暖かいこたつに入って、丸くなって休む猫は、「陰」になります。
寒(陰)を求め、動(陽)である犬に対して、暖(陽)を求め、静(陰)である猫という陰陽関係が成り立ちます。
「変易」・「不易」・「簡易」の三つはどれも「万物の変化」を論じるためのものです。
変化にも意味があり、法則性があることから、それらを目に見える形に現すことで、活用する方法を古代の先人たちは編み出しました。 変化の規律を明らかにしたことで、次にどうなるのかを予想できるようになったのです
。 それを古代中国の医者は医学の中に取り入れて、「今はこういう状態だから次はこのような状態になる」と先読みし、「これから何に気をつけるべきか」または「予後が良さそうだから何々をしても大丈夫ですよ」と養生法を含めて病を把握することができたのです。 このように「陰陽論」は、病の原因とそれによる結果を探り、診断・治療するために、不可欠な要素なのです。