花と美 2
見た目の華やかさに注目が集まりやすい三種類の花ですが、実は共通するもう一つの重大な要素があります。 それは、それぞれの根の部分が「生薬」として用いられることです。 もともとは漢方における「生薬の用い方」を花の姿に例えているという説があり、東洋医学の診断と治療にこそ意味があります。 まさに「花より根っこ」なのです。 まずは゛芍薬゛から、「立てば芍薬」の「立つ」に注目です。 ゛気が立つ゛の言葉の意味は、怒りでイライラする様をイメージします。 ゛立てば゛は゛気が立つ゛のことで、まさに「頭に角が生えているかのように腹を立てている女性、つまりヒステリーを起こしている状態」を指しているといえます。 「怒」の感情は、「肝」の臓と関係し、「気の流れ」を悪くしてします。 東洋医学では、気が流れにくい状態を「気滞」と呼び、身体の診断として用います。 身体の内部と外部を循環している「気」が停滞すると、外部からの邪気が体内に侵入しやすくなったり、「水」や「血」の流れも悪くなるためにあらゆる代謝障害を引き起こしやすくなったりします。 気の流れは肝と肺の臓器と関連が深く、「気滞」となると、肝の筋肉や肺の呼吸に影響がおよびます。
肝の場合は、筋肉が硬くなったり、肉離れのような痛みが出たりします。 肺の場合は、呼吸が浅くなり、ため息が良く出たり、貧乏ゆすりが止まらなくなったり、精神的に落ち着きがなくなったりします。 さらに「気滞の状態」が長引くと、体内で上昇気流が生じることになります。 このことを「逆上せ」と書いて「のぼせ」と呼び、身体の内部で生じている「見えない気の上昇」として、病気の診断の際に用います。 「気が立つ」と「逆上せ」と関連する症状も発症しやすくなることが多いのです。 頭痛、吐き気、逆流性胃炎、過呼吸、めまい、花粉症、咽頭痛、耳鳴りなど「逆上せ」と関連する症状は多種多様です。 「芍薬」は、肝の気を調整することに優れており、「気滞」を取り除き、「逆上せ」を鎮める効果があります。 つまり、筋肉のひきつり、けいれん、ふるえを緩和し、いらつきや気分の落ち込みを軽減します。
肩こりなどの筋肉の疲労に、マニュアル的によく使われる「芍薬甘草湯」は、この理由によるものなのです。
Comments