風邪と葛根湯
風邪を引いたら「葛根湯」というのが、一般的に知られている漢方薬ではないでしょうか。
治療の際、実際に風邪を引いている方からよく聞かれるのが、「葛根湯を飲んだら良いですか」という質問です。
日本人に人気の葛根湯ですが、その起源はもちろん中国にあります。
時代は後漢末期、張仲景が著した「傷寒論」の中に、葛根湯の処方を見ることができます。
仲景先生は、「医聖」と呼ばれるほどの人物で、東洋医学の発展に大きな貢献しました。
傷寒論を読むと、病の診断方法と薬の処方に対する洞察力の鋭さに対して、ただただ敬服せざるえません。
張仲景の著作「傷寒論」の序文には、200人ほどいた一族の三分の二が死に、そのうちの十分の七が傷寒(疫病)で亡くなったとあります。
若くして亡くなった人たちを救う手段が無かったことに奮起して、「傷寒論」を後世に残しました。
この功績によって、東洋医学の治療理念と技術は飛躍的に進歩することになります。
傷寒とは、外部からの邪によって身体が侵される病を意味していて、その中でも「風」や「寒」と関係のある、現代ではいわゆる風邪症状のようなものをさします。
薬法は100を超えており、葛根湯はその一つということになります。
風邪の万能薬として日本人が利用する葛根湯ですが、風邪には決して万能薬はないことを知ってもらう必要があります。
そもそも仲景先生が傷寒論を後世に残した想いの中に、医療に対する嘆きがありました。
当時、薬を誤って飲んだために死んだ人がたくさんいたのです。
傷寒論を読むと、間違った処方を出す医者が多かったことや、医学のレベルが対応できていなかったことに対する怒りや、それを変革する情熱が伝わってきます。
「風邪は万病のもと」とも言われますし、「風邪を治せて一人前」とも言われます。
葛根湯から透かして見える東洋医学について、ふたつの「葛根湯医」を比較して紹介したいと思います。