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葛根湯医(落語編)
日本人には人気のある「葛根湯」、実際の治療現場ではそれほど重宝されることはありません。
風邪の漢方薬はいろいろあり、症状の具合や体質によって使い分ける必要があります。
使い方を間違えると、症状を悪化させることもあるのでとても危険です。
中国や日本では、傷寒論の研究が現代でも盛んですが、その中で注目されることがほとんどないのが現状です。
生薬からみると、もっと重要な処方がたくさんあるからです。
では何故に、日本でこれほどまでに葛根湯は重宝されるのか?
歴史をたどると、そのヒントにたどり着きます。
江戸時代、長い戦乱がようやく終わり、庶民にも平安が訪れた頃、日本に初めての健康ブームが起こります。
健康指南書として現在も愛読されている貝原益軒の「養生訓」は、この頃に書かれました。
養生訓には、長寿を全うするための身体の養生と精神の養生の大切さが説かれています。
さらに注目する点は、医療にあまり簡単に頼らないようにも戒めているところです。
そんな時代の落語の噺の中に、「葛根湯医」があります。
頭が痛むと葛根湯、
お腹が痛むと葛根湯、
関節痛なら葛根湯、
このように、患者が悩んでいる症状に葛根湯ばかり出す「やぶ医者」を題材にしています。
病人の付き添い人にまで葛根湯を薦めてしまうことで落ちになるのですが、当時はこんな医者が溢れていたことの現れでしょうか。
実際、当時ははっきりとした医者の資格があった訳ではないので、やぶ医者ならぬ、ニセ医者も多かったのでしょう。
江戸時代の葛根湯ブームと、現代人に人気の風邪薬との関係、どこか似ているように映りませんか?
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