痛み止めを選択
消炎鎮痛剤の誘惑
70代の女性Tさんは、30代後半から関節リウマチを発症し、現在は手指の関節の変形が著しく、買い物袋を持ったり、包丁で堅いものを切ったりするような握力を必要とする作業で指の痛みが悪化します。
ここ数年は、鍼灸治療を地道に続けてきた効果で、健康状態が順調に改善し、手指の変形も進行が止み、痛みもほとんどでることがなくなりました。
ところが、今年の10月ごろから握力を必要とする作業が増加したため、老化の影響もそれに加わり、最近は手指の関節に痛みが頻繁に出るようになっていました。
そんな最中、年末にあるイベントがあり、その準備のため、連日掃除の手伝いに行きました。
手伝いに行く前から、指の痛みが悪化することは、十分、予想できていました。
しかし、どうしても参加しないといけない用事だそうで、手指の関節の状態を看ながら無理をし過ぎないように治療中に養生指導しています。
ご本人もいろいろ工夫して、指への負担を軽減するようにしてみたようですが、手指の痛みは思いの外悪化し、次の治療まで様子をみることができないほどになりました。
Tさんは痛みの不安を抑えきれなくなり、痛み止めの薬を薬局で買い求めてしまいました。
久々に使用した薬はとても効果があったようで、たった1錠で指の痛みが消失しました。
それから2日後に鍼灸治療をしたのですが、この時も指の痛みはありませんでした。
治療当日のことを詳しく振り返ると、最初の問診でお聞きしたのは、やはり指の痛みに関することでした。
ところがTさんの返事は意外なもので、「指の痛みがない」とのこと。
問診しながら、同時に望診も行います。
顔色がいつもと異なり、つやがなく、唇の色にも赤みがなく、むしろ青く見えました。
身体が冷えないかどうかを聞きましたが、冷える感じはそれほどないようです。
次に脈診をすると、ストレスの反応があり、いつもと違うことが瞬時にわかりました。
この時点で、ますます疑問が生じるようになりました。
なぜなら、ストレスがあると通常ならば痛みが悪化するはずなのですが、Tさんの手指には全く痛みがなく、大きな矛盾がそこにはあったからです。
「おかしいな」と独り言をブツブツつぶやきながら最初の鍼を打ち終わったら、ようやくTさんは市販の痛み止めの薬を飲んだことを打ち明けたのでした。
このことで、一連のおかしい事態の意味がすぐに理解できました。
結局、この日の治療内容はストレスに関する治療が増えただけで、それ以外はいつもと同じ内容となりました。
ストレスの治療をしなければならない理由は、痛み止めの薬の服用以外に考えられません。
そのため、今後、薬の副作用が出る予感がしたので、どのような症状が出るのか不安でしたが、様子をみるしか方法はないのでしばらく経過を観察することになりました。
薬に頼らず、身体にやさしい治療法があります薬には副作用があり、長期的に使用したくはありません。 鍼灸治療は、みなさんの体質と体調に合わせた優れた治療法です。 | ||
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